運は天にあり、鎧は胸にあり、手柄は足にあり
何時も敵を我が掌中に入れて合戦すべし
死なんと戦えば生き、生きんと戦えば必ず死するものなり
運は一定にあらず、時の次第と思うは間違いなり
武士なれば、我すすむべき道はこれ他なしと
自らに運を定めるべし   

〜春日山城壁書〜










序章 〜運命の0421(まるよんにーひと)





2014年。某月某日・・・。

若月陸曹長。
上杉二等陸士。
小宮二等陸士。
河合二等陸士。

以上、女性自衛官4名の運命は、
この日・・・大きく動く事となるのであった。






川*´・_・`リつ<お〜〜!!向こうの方に街の灯が観える〜。

从*´∇`)<ホントだ!!すっげぇ遠いけど、夜景綺麗〜!!!

ル*’ー’リ<すっごい遠いけど、ロマンチック〜!!!

真夜中の糸魚川付近。
地元で「不動山」と呼ばれる、山の山道。
車通りのない山道の脇には、不釣り合いな程大きな、戦車の乗った大型トレーラーが停車していた。
そして。そのすぐ脇で・・・3人がトレーラーに積んである、物資の入った箱に腰を掛け、
能天気に、山道から遥か遠くに見える、糸魚川の街の灯にキャッキャしていると・・・。

州;´・ v ・)∩<コラーー!!弾薬の入った箱を椅子にするなぁ!!!

ル;’ー’リ<あ、曹長!!!

从;´∇`)<すいません。ヒマだったもんで・・・。

州;´・ v ・)<ヒマぁああ?!

州;´・ v ・)∩<この状況の何処を観て、ヒマだと思うんだ、お前ら!!!

川;´・_・`リ<すいません。私が2人を誘いました。ごめんなさい!!!

川;´・_・`リつ<こんな真夜中にこんな山道で、搬送車の故障で立ち往生になった、この絶望感を・・・

川;´・_・`リ<せめて、夜景を観て、癒されよう・・・って。

州;´・ v ・)<オマエなぁ〜〜。

州;´・ v ・)<まぁ、確かに、絶望感はハンパないけどさ・・・。

州;´・ v ・)つ<ったく・・・なんで、搬送車が、よりによって壊れるんだよ!!

そう言って、若月は恨めしそうな表情で、搬送車の車体をボンボンと叩いた。
車の知識が薄い4人には、一体どこがどう壊れたのかは解らない。
なんかもう、叩いて直すしかないような気がしたが、昭和のテレビなら、叩けば動き出すかもしれないが・・・。
自衛隊の搬送車は、とてもじゃないが、叩いたぐらいでは動きだしそうになかった。

州;´・ v ・)<今、時刻は?

ル;’ー’リつ<えーと、まるよんまるごー。

ル;’ー’リ<予定より、30分遅れですね。

州;´・ v ・)<冗談じゃないよ・・・。大規模演習の日に、よりによって。

そう。
ここ新潟では、全国の自衛隊が寄り集まり、大規模訓練が行われる予定であった。
そして、若月達の班も、戦車と共に移動する予定だったのだが・・・。
運搬の途中、搬送車が故障に見舞われると言う、想定外のトラブルが発生したのであった。

从;´∇`)<まぁ、別の搬送車回してくれるって言ってますし、おとなしく、待ってましょうよ。曹長も。

ル*’ー’リ∩<明日から演習でそれどころじゃないですし。今はのんびりしてましょ?

州;´・ v ・)<ムチャ言うな。私はお前らのリーダーなんだぞ?のんびりする気にもならんよ・・・。

川 ´・_・`リ<そんな事、言わないで。いいじゃないですか!

川*´・_・`リつ<ほらほら!!あっちに黒姫山が観えますよ〜!!!曹長!!!

州;´・ v ・)<黒姫山とか言われても、暗くてみえねーよ。

州;´・ v ・)<ってか・・・詳しいな。上杉・・・。

川 ´・_・`リ∩<ハッ!!自分、この辺りの出身ですから!!!

州´・ v ・)<え?!そうなのか!?それは知らなかった。

川 ´・_・`リ<糸魚川出身です!!

从*´∇`)∩<そう!!凄いんですよ、曹長!!知ってます?!

从*´∇`)つ<コイツ!!上杉謙信の末裔なんですよ?!

州*´・ v ・)<え?!上杉謙信って・・・あの・・・越後の・・・・・・・塩の人!?

川*´・_・`リ<はい!塩の人です!!!

ル*’ー’リ=3<うっそ!!!塩、送っちゃった人!?凄〜〜い!!!

州*´・ v ・)つ<あ!!言われてみれば・・・・・・苗字、上杉じゃないか!!オマエ!!!

搬送車の故障に、イライラを募らせていた若月であったが・・・。
同じ班の上杉の意外すぎる家柄に、イライラを忘れ、思わず前のめりで食いつくのであった。

州´・ v ・)<へ〜〜。まさか、上杉謙信の末裔が、同じ班だとは・・・。

州*´・ v ・)∩<上杉謙信の末裔ってことは、もしかして、強いのか!?オマエ!!!

川;´・_・`リ<いや・・・。そんなに強くはないです。フツーです。

川;´・_・`リ<上杉謙信の末裔だからって、強くはないですよ。

川;´・_・`リ<多分、河合や曹長の方が強いです。

ル;’ー’リつ<その理屈で行くと、フィギュアスケートの織田君も、強くなっちゃいますよ。曹長・・・。

从;´∇`)<織田君、すぐ泣くしな。弱そうだよね・・・。

州*´・ v ・)<ハハハ。それもそうか〜。

川*´・_・`リ∩<でも、今日は、大規模演習って事で・・・謙信公の時代から我が家に伝わる、戦の御守り、持って来てるんです!!

川*´・_・`リつ<だから。今日の私は、強いかもしれませんよ!!!

州´・ v ・)<御守り!?そんなのあるのか?!上杉家!!すごい!!

ル*’ー’リ<あはは。頼りになる〜!!!

川*´・_・`リ∩<ま。ホントに御守りで強くなれるなら、今頃、オリンピック選手ですけどね。

从*´∇`)<そりゃそーだ!!

物資の入った箱に腰を掛け、談笑をしている4人。
すると、唐突に、上官から無線連絡が入る。
4人は即座に雑談を止め、無線に応答する。

「あ・・・こちら若月!!」
「浅間だ。あと10分ほどで、搬送車が到着する。もうしばらく待機していろ」
「はっ!!!」

そんなやり取りを、隣で聞き、
上杉はチラリと腕時計を確認する。
0414。

川 ´・_・`リ<あと、10分ほどか〜。

川 ´・_・`リつ<じゃぁ、物資を移す準備しといた方がいいですね。

州´・ v ・)<そうだな。とりあえず、物資は、トレーラーから降ろしとくか。

ル*’ー’リ<戦車は勝手に動かすとマズイですから。弾薬とかだけ、とりあえず、降ろしときましょ。


0420。
4人で搬送車から、弾薬や食料などの物資を地面に降ろし終えた。
その時・・・。
山道の下の方から、ガタガタガタと・・・大きな車の様なモノが駆けつける音が、微かに聞こえてきた。

州´・ v ・)<あ。多分、搬送車が近づいてきたんじゃない?

川 ´・_・`リ<あと10分ほどって言ってたけど。意外と速かったですね。

ル*’ー’リ<優秀!!優秀!!さすが、浅間三曹!!

从*´∇`)∩<はぁ〜〜〜。やっと、移動できるな〜〜!!!

ここで立ち往生して1時間。
人っ子一人、車一台、通る事のなかった山道に、久々に聞こえてきた、大型車の音。
ようやく移動できる〜〜〜と、4人は嬉しそうに、背伸びをした・・・。



瞬間だった――。



Σ 州´・ v ・)<ん?

州´・ v ・)<なにか・・・・聞こえない?

川 ´・_・`リ<へ?搬送車の音じゃないんですか?

州;´・ v ・)<いや。そう言うんじゃなくって・・・なんか・・・耳鳴りみたいな・・・・。

ル;’ー’リ<言われてみれば・・・なんか・・・キーーーンって・・・・。

从;´∇`)<ホントだ・・・。

川;´・_・`リ<・・・・・・・・・なにか・・・聞こえる・・・。


そして、
0421・・・。

耳鳴りの音は次第に大きくなり、
やがてそれは、落雷の様な轟音へと変わった。
人気のない山道に、眩い雷光と、凄まじい雷鳴がこだまし、
大きな爆風の様なモノが発生したのであった!!













「・・・・う、上杉ぃいいい!!!!!」


激しいブレーキ音。
代替えの搬送車は山道に停車をし、中から、彼女ら4人の上官である浅間三曹が飛び出してきた。
まるで雷でも落ちたかのような雷光と雷鳴を遠くから確認し、
浅間三曹は、現場に何か異変があったのではないかと、急いで駆け付けたのだった。
だが・・・・・。

「上杉・・・・若月・・・こ、小宮・・・河合・・・??」

浅間三曹は呆然とした表情で、その場に立ち尽くした。
何故なら、そこには何もなかったからだ。
雷の跡などは何もない。特に現場に異変は何もなかった・・・。
戦車も、壊れた搬送車も、変わらずそこに置いてあった。
だが、



「う、上杉・・・ど、何処に行った・・・?」



大きな異変が一つだけあった。
それは、彼女たち4人の姿だけが、
まるで神隠しにあったかのように・・・その場から消え失せていた事であった・・・。

「な、なにが・・・起きた?」

浅間三曹は膝から崩れ落ちた。
ただ茫然と、取り残された戦車を見つめたまま、彼は途方に暮れていた。
ポツリポツリと、うなだれる彼の肩には、雨粒が降りはじめて来た・・・。











戦国自衛隊 〜女性自衛官 統一 セヨ〜












鳥の鳴き声が聞こえる。
未だ耳の奥に残る耳鳴りと、クラクラとする頭を押さえ、若月はゆっくりと頭を上げた。
もう日が昇っているのか、さっきまで真っ暗だった空が、微かに白んでいた。

州;´・ v ・)<あれ?日が昇っている・・・・いつの間に。

パッパッと体についた泥を払いのける。
だが、払いのけている最中に、ふと、若月は気づく。

州;´・ v ・)<あれ?なんでこんなに、泥だらけなんだ?

州;´・ v ・)<ってか。ここの山道。舗装されてなかったっけ?

そう。
搬送車が通れるような道だ。
当然、アスファルトに舗装されていたハズだったが・・・何故か、今、自分が立っている場所は、泥でぬかるんでいた。
そしてそれは、ここだけじゃない。まわりもそう・・・・。
舗装されている場所は、一か所も見当たらなかった。

州;´・ v ・)<え?なんで・・・・ここは・・・うちらが居た場所じゃない?

州;´・ v ・)<ここは・・・何処なんだ?

Σ州;´・ v ・)<つーか、戦車は何処行ったんだ!!?

大切な事に気づく。
そうだ、そもそも戦車と搬送車が見当たらない。
あんなでっかいモノが見つからないとか、あり得ない。
まさか、搬送車ごと盗まれたのか?!
若月がわけわからないまま、周囲をきょろきょろと見渡すと・・・。

ル;’ー’リ<・・・・・イタタ。なんだ、今の・・・。

三 州*´・ v ・)つ<おぉお!!小宮、無事だったのか!!!

ル;’ー’リ<はぁ、なんとか・・・。ちょっと腰打ったみたいだけど・・・。

ル;’ー’リ<ってか、ここ・・・・・・何処です?

州;´・ v ・)<わ、解らない。

州;´・ v ・)つ<戦車も見当たらないんだ!!

ル;’ー’リ<はぁ?戦車が!!それ、ヤバくないですか!?

2人は青冷めた表情で、辺りを見渡した。
うっそうと生い茂る森。木々の隙間から、日の光がキラキラと注ぎ込む。
山道から見下ろす風景は、さっき見ていた風景と似ているけども・・・?
何処となく、様子がさっきと違う。

ル;’ー’リつ<あれ。上杉が言ってた、黒姫山ですよね?

州;´・ v ・)<ほんとだ。じゃぁ・・・うちらのいる場所は、一緒みたいだけど・・・。

州;´・ v ・)<景色が・・・妙にあっさりしてない?

ル;’ー’リ∩<街が見当たらないですね?どこにも。

州;´・ v ・)<どう・・・言う・・・事だ?

夜観ていた時は、遠くに糸魚川の夜景が観えた。
つまり、あっちには糸魚川の街があるはなのだが・・・・。
今まであったはずの、遠くに見えていた街の風景が、何もかも消えている・・・。

一体、何が起きたのだろうか?

確かあの時・・・激しい耳鳴りがして、雷鳴のような音と閃光が発生して、
爆風の様なものが起きて・・・・気を失って・・・。
若月と小宮が状況を理解出来ぬまま、周囲を見渡していると・・・。




<あ!!若月曹長!!小宮!!無事だったんだ!!!    Σ ル;’ー’リ Σ州;´・ v ・)<??




从;´∇`)∩<良かった・・・他に誰もいないかと思ったよ。

ル*’ー’リつ<あぁ!!河合!!!

州;´・ v ・)<良かった、河合も無事だったか!!!

从;´∇`)つ<まぁ。ちょっと肘、擦り剥いたけどね・・・。

ル;’ー’リ<えぇ?!大丈夫?!河合!!

ル*’ー’リつ<やだ、血が出てるね・・・。迷彩服の天使が、ペロペロ舐めて治してあげようか?

从;´∇`)∩<いらん!!断る!!キモい!!

鬼のような形相で断固として断る河合に、「もぅ、ツンデレなんだから・・・」と意味不明な事をのたまう小宮。
ツンは兎も角、デレの要素が、今の会話に1ミリもないのであるが・・・。
だが、そんなツンデレ談議よりも、河合にはもっと重要な事があったのだ。

从;´∇`)<ってか。私のかすり傷程度の怪我よりも・・・。

从;´∇`)つ<上杉が・・・大変な事になってるんだ!!

ル;’ー’リ州;´・ v ・)<え?!上杉が!!!!

州;´・ v ・)<上杉も無事だったのか?

从;´∇`)∩<あぁ。ただ、アイツ・・・爆風に巻き込まれて・・・。

州;´・ v ・)<ま、まさか・・・上杉が怪我でも?!

从;´∇`)つ<と、ともかく・・・こっちに来てくれ!!!!

そう言って、2人の手を引っ張り駆けだす河合。
3人が向かった場所は、すぐ裏手にある、小川の付近であった。
河合が「上杉!!曹長たちが見つかったぞ」と声をかけると、
必死に抵抗するかのような声で「そ、曹長たちが?!く、来るな!!来ちゃダメだ!!」と言う、上杉の叫びが聞こえた。
い、一体、上杉の身に何が・・・?

州;´・ v ・)<大丈夫か!上杉!!!

ル;’ー’リ<今、助けるからね、上杉!!!頑張って!!!!

川;´・_・`リ<ダメだ!!来ちゃダメだ!2人とも!!!

死に物狂いで抗う上杉。何故、そこまで彼女は拒否るのか?
2人が急ぎ駆けつけ、上杉の元へ寄って行った、瞬間であった。
駆けつけた2人が観たものは!!!!


Σル;’ー’リ<!!!

Σ州;´・ v ・)<!!!!!



















saki111



ル;’ー’リ 州;´・ v ・)< う、上杉の、ヅラが浮いてる!!!



川;´・_・`リつ<来るな――!!!来るんじゃねぇ!!!!私を観るなぁ!!!!!!

そう・・・。
そこに居たのは、謎の爆風で、ヅラが浮いてしまったらしい、上杉の姿が・・・。
河合も青ざめる程のあまりの惨事に、
若月と小宮は、声を震わせながら、上杉を励ますのでありました。

州*´; v ;)<(ヅラ以外)ぶ、無事で・・・くく・・・よ、良かった・・・ププ・・・・う、上杉。

ル*;’ー’リ<えっと・・・ま、まさに、お怪我(お毛が)なくて、結構で!!

从*;´∇`)つ<ぎゃはは!!!小宮、マジ、上手すぎ!!!

川#´・_・`リ∩<うっさい!人のヅラをバカにするなぁ!!!

川#´・_・`リ<くっそぉ!!!そもそも、なんで死守のメンバーなのに、ビジュアルはミュージカルの方を使うんだよ!!ここの中の人間は!!

川;´・_・`リ∩<死守の方なら、上杉、可愛かったのにさぁ!!!

いや、そんなの、お前のヅラが面白いからに決まってるじゃん。
と言う、中の人の返答は置いといて・・・。
ヅラ以外は至って無事そうな上杉に、若月と小宮はホッと胸をなでおろすのでありました。



だが、しかし。



4人の無事を確認し、安心するのもつかの間。
一体、自分たちは何処に来てしまったのであろうか・・・。
肝心なことは相変わらず解らず仕舞い。
たった一つの手がかりは・・・

州;´・ v ・)<煙が・・・見える。

川;´・_・`リ<昨夜まではあんなトコ、煙が登ってませんでしたよね?

ル;’ー’リ<煙があると言う事は、人がいる証拠じゃない?

山のずっと下の方から、煙のようなものが立ち上っていた。
それは一つではなく、何個も・・・・。
4人は不安そうに、顔を見合わせた。

州;´・ v ・)<どうする?

从;´∇`)<怖いけど・・・・・ちょっと、行ってみる価値はありそうだね。

川 ´・_・`リ<大丈夫かな?危険じゃないかな?

ル*;’ー’リつ<大丈夫。もう、ヅラはヅレてないよ。安心して。上杉!!

川;´・_・`リ∩<そっちの危険じゃねぇ!!!私のヅラの危険はどーでもいいの!!

州*´; v ;)プルプル <そうだ。上杉のヅライジリよりも、今は、状況の確認が大切だぞ!!!小宮!!!

川;´・_・`リ<・・・・・・・・・ホントにそう思ってるなら、プルプルしないで下さい、曹長。

从*´∇`)∩<よし!!じゃぁ、さっそく確認に行くぞ!!!ヅラ杉!!!みんな!!!

川;´・_・`リ<ひぃい!!序章からさっそく、嫌なあだ名をつけられた!!!!

川;´・_・`リ∩<せっかく、最初の方はシリアスに進んでたのになぁ!!!もぅ!!!!

こうして・・・。
若月、小宮、河合、ヅラ杉の4人は、自分達の置かれた状況を把握できないまま・・・
たった1つの手がかりである、谷那から立ち上る煙を目指して、進むのであった。


(序章 完)


   第1章へ・・・つづく。

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